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事務所だより 1月号

2022/1/05 水曜日

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◆ 2022年1月の税務
◆ 上場株式の譲渡所得課税
◆ 「同居」はいつから?小規模宅地等の課税価格の減額
生命保険金受取人の実質判定
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◆ 2022年1月の税務
1月11日
●前年12月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納付(年2回納付の特例適用
者は前年7月から12月までの徴収分を1月20日までに納付)

1月31日
●支払調書の提出
●源泉徴収票の交付
●固定資産税の償却資産に関する申告
●11月決算法人の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●2月、5月、8月、11月決算法人の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●法人・個人事業者の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●5月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●消費税の年税額が400万円超の2月、5月、8月決算法人の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の10月、11月決算法人を除く法人・個人事業者の1月ごとの中間申告(9月決算法人は2ヶ月分)<消費税・地方消費税>
●給与支払報告書の提出

○給与所得者の扶養控除等申告書の提出(本年最初の給与支払日の前日)
○個人の道府県民税及び市町村民税の納付(第4期分)(1月中において市町村の条例で定める日)

◆ 上場株式の譲渡所得課税

上場株式を売却した人の確定申告や損益通算について押さえておきましょう。

▽まずは源泉徴収済みかを確認!

 株式で売却益のある人には、原則として確定申告が必要になりますが、証券会社に源泉徴収ありの特定口座(源泉徴収口座)を開設している人は、既に譲渡所得に課税済みとなっていますので、申告の必要はありません。
一方、源泉徴収なしの特定口座(簡易口座)や一般口座の人には源泉徴収されていませんので確定申告が必要になります。
証券会社から送付される特定口座年間取引報告書等で源泉徴収の有無を確認し、申告漏れとならないように注意しましょう。

▽税率は20.315%
 上場株式の譲渡所得に対する税率は、20.315%(所得税15.315%、住民税5%)です。譲渡所得は、株式の売却金額から取得費と証券会社の委託手数料を控除した残額です。これに上記の税率を乗じて所得税額と住民税額(株式等譲渡所得割額)を計算します。取得費は株式の購入価額ですが、同じ銘柄を複数回にわたり購入した場合は、総平均法に準ずる方法(移動平均法)により取得費を計算します。

▽申告分離課税で損益通算
 上場株式の譲渡損失は源泉徴収のあるなしにかかわらず、申告分離課税による確定申告をすれば他の上場株式の譲渡所得および配当所得等と損益通算して、税額の還付を受けることができます。同じ源泉徴収口座内である場合は、証券会社が損益通算するので申告手続きは不要です。また、配当所得等を源泉徴収口座に取り込み、譲渡損失との損益通算もできます。

▽控除しきれない金額は繰越控除
 その年分で損益通算してもなお控除しきれない譲渡損失は、翌年以後3年間にわたり繰り越して各年分の譲渡所得や配当所得等の金額から控除できます。この取扱いを受けるには、毎年連続して申告分離課税による確定申告が必要です。過去3年以内に譲渡損失の繰越控除の適用を受けた人は、その年に株式売却がなくても確定申告が必要となるので注意しましょう。
 また、所得税を申告分離課税とし、住民税は申告不要とする選択もできます。令和3年分の確定申告からは、配当所得等、譲渡所得の全部を条件に確定申告書に記載するだけで住民税を申告不要にできます。

 

◆ 「同居」はいつから?小規模宅地等の課税価格の減額

▽「同居するのが一番の節税」と聞きますが
 「同居をするのが一番の節税」という言葉をたまに耳にします。所得税に同居老親等(扶養控除)や同居特別障害者(障害者控除)という制度もありますが、ここでは節税効果の高い相続税の「小規模宅地等の課税価格の特例」のことを言っています。
 相続税では、居住用や事業用の宅地は、被相続人らの「生活の基盤」となっており、その処分に相当の制約があることから、一定の限度面積まで、課税価格の80%(又は50%)の減額を認めています。これを「小規模宅地等の課税価格の特例」といいます。

▽特定居住用宅地等の要件
 被相続人の居宅の敷地となっている宅地を同居していた親族が相続等により取得した場合に、次の要件を充たすときは、「特定居住用宅地等」とし80%減額(330㎡まで)を受けることができます。
(1)居住継続要件
 相続開始時から相続税の申告期限まで、引続き、その居宅に居住していること

(2)保有継続要件
 その宅地等を相続税の申告期限まで保有していること

▽条文に「同居はいつから」とは明記なし
 この場合、同居親族が相続開始時から申告期限までには、被相続人の居宅であった家屋に住み続けばならないと規定はされていますが、同居親族が被相続人と「いつから同居しなければならない」とは、条文に明記されていません。少しの間でも、被相続人と亡くなる直前まで一緒に住んでいればよいということになります。

▽ご近所に聞かれても、平気なように!
 だからといって、税務調査の際にチェックされないわけではありません。「同居」については、実態で判断されます。住民票だけを移している「形だけ」の場合には、同居の実態がないと判断されることがあります。同居親族への郵便物の所在や同居親族の勤務会社での通勤手当(定期券)の申請状況、子供の学校はどこなのかなど聞かれることがあります。調査官が近所にヒアリングしたときに「おばあちゃん(被相続人)は一人暮らしだと言っていた」など言われてしまうと、同居の実態がないと疑われます。ご近所に聞かれても平気なぐらいの期間は同居していることが望ましいといえます。

 

生命保険金受取人の実質判定

 生命保険に加入すると、保険金の受取人を指定しますが、いざ被保険者が死亡した時、保険金を渡したい人が当初から変わってしまっているときもあります。そのような場合、課税関係はどうなるのでしょうか。

▽両親から妻や子への名義変更
 社会人になって初めて生命保険に加入するとき、保険金の受取人に自身の両親を指定することが少なくありませんが、その後、結婚して子供が生まれ、家族ができてからも保険金受取人の変更手続きをせずに親の名義のままとなっている場合があります。
 しかし、自身が病気や不慮の事故で死亡してしまったとき、残された家族の生計を支えていくことを思えば、保険金の受取人は妻や子になってほしいところです。

▽受取人名義変更の課税関係
 相続では保険金受取人は、保険契約上の受取人となりますが、保険金受取人以外の者が現実に保険金を取得している場合、保険金受取人の変更手続きがなされていなかったことについて、やむをえない事情があるなど相当の理由があると認められるときは、実際に保険金を受け取った者を保険金受取人とする取扱いがあります。
 契約上の保険金受取人である両親も妻や子を保険金受取人とすることを望み、やむを得ない事情があると認められれば、妻や子のみなし相続財産として課税対象となり、また、相続人となるので非課税措置の適用を受けることもできます。
 なお、生命保険金の受取人名義を変更した時点では課税関係は生じません。被相続人が自身を被保険者とし、保険料を負担している場合は、保険事故(被保険者の死亡)が発生して保険金の受取りが確定したときに課税関係が生じます。

▽離婚した元妻からの名義変更
 ところで妻を受取人とする生命保険に加入していた夫が、離婚しても受取人名義を元妻のまま変更せずに死亡してしまったら、どうなるでしょうか。この場合、元妻は離婚しても保険金受取人の地位を失わないため、生命保険金は元妻に支払われ、みなし相続財産として課税対象となります。そして元妻は相続人ではないので生命保険金の非課税措置の適用は受けられません。
 離婚するときは、財産分与とあわせて、生命保険金受取人の名義変更についても忘れないようにしましょう。