事務所だより 6月号
日中はもう汗ばむ陽気となりました。
暑い季節に向かいますゆえ、なにとぞご自愛ください。
それでは、今月の事務所だよりをお届けします。
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◆ 2024年6月の税務
◆ リスキリングとリカレント教育
◆ 経営者保証ガイドライン~早期廃業と再チャレンジ~
◆相続登記は3年以内に!
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◆ 2024年6月の税務
6月10日
●5月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額・納期の特例を受けている者の住民税の特別徴収税額(前年12月~当年5月分)の納付
6月17日
●所得税の予定納税額の通知
7月1日
●4月決算法人の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●1月、4月、7月、10月決算法人の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●法人・個人事業者の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●10月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●消費税の年税額が400万円超の1月、7月、10月決算法人の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の3月、4月決算法人を除く法人・個人事業者の1月ごとの中間申告(2月決算法人は2ヶ月分)<消費税・地方消費税>
●国外財産調書・財産債務調書の提出
○個人の道府県民税及び市町村民税の納付(第1期分)(6月、8月、10月及び1月中(均等割のみを課する場合にあっては6月中)において市町村の条例で定める日)
◆ リスキリングとリカレント教育
▽DX時代に必要なリスキリング
一般的にリスキリングやリカレント教育はともに「学び直し」と定義されることが多い言葉ですが背景や目的は違っています。
経済産業省はリスキリングを「新しい職業に就くため、あるいは今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために必要なスキルを獲得する/させること」と定義しています。必ずしも「リスキリング=DX教育」ではありませんが、「企業が戦力的に新しいビジネスに対応するために不可欠なスキル・知識の獲得を促す」という企業視点です。実践に重きを置き、DX化のための新たなスキルの習得をすることを言います。リスキリングは社会の要請により学びを提供する視点が強い言葉ですが、学ぶ本人の主体性なしに成功はありません。
▽リカレント教育とは
リスキリングと並行して語られることが多いのが「リカレント教育」です。「循環する、繰り返す」という意味を持ち、業務と並行しながら学ぶリスキリングと違い、学校教育から離れた後も必要なタイミングで仕事と教育を繰り返し、個人の学びに主体が置かれている点が違います。
リカレント教育は人生100年時代におけるQOL向上でしょう。働く期間が延びればスキルや知識のアップデートも必要になるということです。学ぶことで専門性や希少性が高まります。日本では今まで年功序列制や終身雇用が一般的でOJTなどの育成をしてきましたが、これからのジョブ型雇用に変化する時代にはリカレント教育の関心が高くなるでしょう。
▽企業のリスキリングが注目されている理由
2020年のダボス会議で「リスキリング革命」が主要な議題となり、それは「第4次産業革命の技術変化に対応するため2030年までに全世界で10億人により良い教育、スキル、仕事を提供する」というものです。2022年に岸田首相がリスキリングのための支援制度を政策の中に盛り込むことを表明し、人への投資が重要であるとの考えを示しました。企業がリスキリングを推進するメリットは、1.ワークエンゲージメント(仕事に対してのポジティブで充実した心理状態)の向上、
2.自立型人材の育成、3.社内業務に精通した人材に取り組んでもらえる、などのメリットがあります。
◆ 経営者保証ガイドライン~早期廃業と再チャレンジ~
▽「会社の破産」=「経営者の破産」?
会社の経営が厳しく、廃業を考えているとしましょう。経営者の個人保証がある場合、会社が破産すると、経営者も破産するしかないのでしょうか。いいえ、違います。
法人が破産しても、「経営者保証に関するガイドライン」を活用し、保証債務を整理することで、個人破産を回避し、再出発できる可能性があります。ガイドラインに基づき保証債務を整理した場合、経営者に一定の資産を残すことを認めています。
▽経営者保証に関するガイドライン適用要件
ガイドラインに基づく保証債務整理を申し出る場合は、以下のような要件を充足している必要があります。
●法人(主債務者)が法的整理(破産、民事再生等)や私的整理及びこれに準じる手続(準則型私的整理手続)を開始申立て済みである。
●対象債権者に経済合理性が期待できる。
●法人及び保証人が弁済について誠実であり、対象債権者の請求に応じ、財産状況等について適時適切に開示している。
▽早期決断のメリット
廃業等を早期決断することによって、事業が毀損する前に債務整理をすることで、売掛債権回収の極大化が図られるほか、早期売却価格ではなく市場価格で不動産等を売却できます。また、金融機関に経済合理性が生まれ、インセンティブ資産を手元に残せる可能性があります。
▽インセンティブ資産とは
現時点で清算することにより、将来に清算した場合よりも、回収見込み額が増加する額がインセンティブ資産の上限となります。
(1)一定期間の生計費に相当する額の資産
(2)華美でない自宅
(3)その他の資産(個別事情を考慮して判断)
▽どこに相談すればいいの?
まずは、取引金融機関や中小企業活性化協議会、REVIC(地域経済活性化支援機構)、支援専門家(弁護士、税理士等)等へご相談ください。早めの相談がガイドラインに基づく保証債務整理や、廃業だけでなく、事業再生や事業承継など、取り得る選択肢を広げることが期待されます。
◆相続登記は3年以内に!
被相続人、相続人ともに高齢化が進み、相続が短い期間に連続して起きることが、今後、常態化するものと思われます。
不動産の相続についても遺言や遺産分割協議により取得者を登記しないと、相続を重ねるうちに法定相続分で分割され、実質的な引き取り手はいなくなり、所有者不明土地となる原因となります。
数次にわたり相続がされている場合は、法定相続人がたくさんいて、代襲相続人を含め、遺産分割協議で取得者を決めることが難航することも予測されます。早めの遺言書作成や遺産分割協議で土地の帰属者を決めることが必要です。
▽相続開始から3年以内に登記
令和3年の法律改正で、令和6年4月1日以降に相続が開始した場合は、不動産の取得を知った日から3年以内の相続登記が義務化されました。また、令和6年4月1日前に相続が開始して取得した不動産は、令和9年3月31日までの猶予期間に相続登記が必要になります。正当な理由なく相続登記しない場合は、10万円以下の過料が課される可能性があります。
▽相続人申告登記で過料を回避
遺産分割協議が難航し、3年以内の相続登記が見込めない場合、相続登記義務を履行したものとみなす簡易な措置として「相続人申告登記制度」が、令和6年4月1日から開始されました。相続人は対象不動産を特定し、戸除籍謄本等を添付して、①所有権の登記名義人について相続が開始したこと、②自らが、その登記名義人の相続人であることを法務局の登記官に申し出ます。
なお、相続人申告登記をした後、遺産分割協議によって不動産を取得した場合は、遺産分割の日から3年以内に、遺産分割の内容に応じた相続登記が必要になります。
▽相続登記の登録免許税の免税措置
相続登記に伴う登録免許税については、令和7年3月31日までの登記について次の2つの免税措置があります。
(1)相続により土地を取得した相続人が相続登記をしないで死亡した場合
相続人が相続により取得した土地の所有権移転登記を受ける前に死亡したときは、その死亡した相続人を登記名義人とする登記について、登録免許税は課されません。
(2)不動産の価額が100万円以下の土地
土地の相続による所有権移転登記、表題部所有者の相続人が受ける所有権の保存登記について、登録免許税は課されません。