事務所だより 2月号
寒気ことのほか厳しい毎日が続いております。
お風邪など召しませぬようお気を付けください。それでは、今月の事務所だよりをお届けします。
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◆ 2022年2月の税務
◆ 相続登記が義務化されます
◆ 持株富裕層の節税対策
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◆ 2022年2月の税務
2月10日
●1月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納付
2月28日
●前年12月決算法人及び決算期の定めのない人格なき社団等の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●3月、6月、9月、12月決算法人の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●法人の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●6月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●消費税の年税額が400万円超の3月、6月、9月決算法人の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の11月、12月決算法人を除く法人の1月ごとの中間申告(10月決算法人は2ヶ月分)<消費税・地方消費税>
○前年分贈与税の申告(申告期間:2月1日から3月15日まで)
○前年分所得税の確定申告(申告期間:2月16日から3月15日まで)
○固定資産税(都市計画税)の第4期分の納付(2月中において市町村の条例で定める日)
◆ 相続登記が義務化されます
▽相続登記は3年以内に
令和3年4月に成立した改正不動産登記法では、不動産を取得した相続人に対し、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請が義務付けられました。
これまで登記未了であった全ての不動産にも適用され、正当な理由のない申請漏れは、10万円以下の過料の対象となります。新制度は成立後3年以内、令和6年までに施行される予定です。経過措置により施行日前の相続・遺贈の場合、令和6年までの施行から3年間が登記申請義務の履行期間となります。
▽新たに相続人申告登記制度がスタート
相続人の申請義務を簡易に履行できる「相続人申告登記制度」が新設されました。相続登記されないまま長期化すると所有者不明土地を生み、行政に支障をきたす原因にもなります。このため、相続人申告登記では遺産分割未了であっても登記名義人について相続が開始したこと、相続人の氏名・住所を登記に付記することで登記義務を履行できることとしました。遺産分割未了のため、持分の登記はありません。後日、遺産分割協議が整ったときは遺産分割成立日から3年以内に、協議の結果を踏まえた登記申請が義務付けられます。
▽とりあえず法定相続分での登記に注意!
もちろん、遺産分割未了の状態であっても従前どおり相続開始後3年以内に、とりあえず法定相続分で暫定的な登記を行い、遺産分割協議が調った後に登記し直すことも可能です。
しかし、法定相続分で登記をしても遺産分割協議前であれば不動産の利用、売却等には共有者の間で何らかの同意が必要となります。相続人が死亡すると権利者は更に増えて、遺産分割は難航必至です。
▽相続人申告登記も遺産分割は先送りのまま
相続人申告登記を行って遺産分割協議を続行する場合も、民法上は、法定相続分で共有されたままですので、不動産の利用、売却等に際し、共有者の間で同意が必要となることに変わりなく、相続人申告登記も遺産分割の先送りに過ぎません。
▽それぞれの事情を斟酌した遺産分割協議を
相続した不動産は相続人の居住用とするか、賃貸用とするか、売却をいつするかなど有効利用をはかり、そのうえでそれぞれの相続人の事情を斟酌した速やかな遺産分割協議ができるかがポイントになるのではないでしょうか。
◆ 持株富裕層の節税対策
▽比率3%以上の大口個人株主
株式の配当金に対する課税は、一般的には、源泉徴収選択特定口座を利用した申告不要源泉分離課税で、20.315%での税負担(所得税・復興税・住民税)で済みますが、上場企業の持株比率3%以上の大口個人株主については、20.42%(住民税なし)の源泉徴収をされた上で、総合課税での申告となります。課税所得が4000万円以上の部分は住民税を含めて55.945%となります。一般の20.315%の分離課税での税負担と比べてかなり高負担となります。
▽総合課税の場合の配慮は微少
ただし、総合課税の場合は、法人税での受取配当等の益金不算入制度と同様に二重課税緩和の趣旨から、配当控除という制度が用意されています。課税所得金額が1000万円以下の部分に該当する配当所得には、12.8%(所得税10%、住民税2.8%)、1000万円超の部分に該当する配当所得には、6.4%(所得税5%、住民税1.4%)を控除することができます。
でも、全体から見た割合は小さいため、それほど大きな効果はありません。
▽3%以上大口個人株主の節税対策
それで、3%以上の大口個人株主は、個人名義ではなく資産管理会社を設立して、3%以上部分の株式を法人名義にする、という選択を多くの場合行っています。
そうすると、個人所有部分は20.315%の分離課税での申告不要にすることができ、法人所有部分は、持株比率1/3超なら100%益金不算入、持株比率5%超~1/3以下なら50%益金不算入、持株比率5%以下でも20%益金不算入となるので、個人の配当控除より有利です。その上、役員報酬等の形での家族への所得分散ができ、法人税の負担も相当に圧縮可能です。
▽法人化後の更なる節税プラン
逆に、税負担の少ない法人に財産が集積し、資産の中の株式の割合が50%以上だと、相続などの時に、しっかり財産課税されてしまうので、借入金等により賃貸不動産その他の資産を取得して、50%未満化策を講ずるケースも珍しくありません。
また、法人で、含み益の大きい財産を譲渡すると、法人での約33%の課税が行なわれ、さらにそれを個人の所得となる形で移転すると、2段階での課税となります。これを回避するために、最近は、適格会社分割による会社の複数化により、M&Aでの会社売却を準備する方法で、20.315%の分離課税化する案も考えられています。