ブログBLOG

事務所だより 4月号

2022/4/01 金曜日

春の暖かい日差しが気持ちのいい季節になりました。
いかがお過ごしでしょうか。

それでは、今月の事務所だよりをお届けします。

 

=-=-= 目次 -=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
◆ 2022年4月の税務
◆ 令和4年度の雇用保険料率2段階引き上げ
◆ 相続税額の取得費加算の特例
賃貸不動産の一時的空室

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-

 

◆ 2022年4月の税務

4月11日
●3月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納付

4月15日
●給与支払報告に係る給与所得者異動届出

5月2日
●公共法人等の道府県民税及び市町村民税均等割の申告
●2月決算法人の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●2月、5月、8月、11月決算法人の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●法人・個人事業者の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税
●8月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●消費税の年税額が400万円超の5月、8月、11月決算法人の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の1月、2月決算法人を除く法人の1月ごとの中間申告(12月決算法人は2ヶ月分)<消費税・地方消費税>

○軽自動車税(種別割)の納付(4月中において市町村の条例で定める日)
○固定資産税(都市計画税)の第1期分の納付(4月中において市町村の条例で定める日)
○固定資産課税台帳の縦覧期間(4月1日から20日又は最初の固定資産税の納期限のいずれか遅い日以後の日までの期間)
○固定資産課税台帳への登録価格の審査の申出(市町村が固定資産の価格を登録したことを公示した日から納税通知書の交付を受けた日後3月を経過する日までの期間等)

 

◆ 令和4年度の雇用保険料率2段階引き上げ

▽2段階で引き上げ改定される雇用保険料
 新型コロナの影響が続く中、おととしの2月からこれまでの雇用調整助成金等の支給額は5兆円を超えていて雇用保険の財源不足が課題となっています。厚労省の審議会で議論されてきましたが、雇用保険料改定が決まりました。それによると労使折半で賃金の0.2%を負担している失業給付などを支払う事業の保険料率は4月から半年据え置き、10月から3月まで0.6%上げるとしています。一般の事業では労使で4月~9月1000分の9.5、10月~3月は1000分の13.5となります。4月の時点では労働者の給与から控除される保険料は変更ありません。

▽改定の内訳と流れ
 雇用保険料は労使が負担する雇用保険料や国庫負担などで賄われています。雇用保険料の中身は失業給付(労使折半)、育児休業給付(労使折半)、雇用二事業(事業主負担、助成金や教育訓練に充てる)で構成されています。 今までは積立金が一定水準を超えていたことで労働者0.3%、事業主0.6%と原則より低い負担で
抑えられてきましたがコロナ禍で積立金が枯渇してきています。
 令和4年度の失業負担分は4月には据え置かれますが10月には0.6になります。また、育児休業給付に係る保険料率は年間通し0.4%のまま据え置かれます。
 一方、事業主のみが負担する「雇用保険二事業」の料率は4月から0.3%から0.35%に上がります。その結果事業主負担は全体で0.65%になります。

▽料率改定事務 変更分はいつから
 今のところの予想ですが、令和4年度の労働保険概算確定申告時に令和4年度の概算額として事業主負担の二事業の引き上げ分を乗せます。また、10月からの料率改定の分は10月以降の概算賃金額に引き上げられる新料率をかけて保険料の概算額を出し、前半分と後半分を足して1年間の概算額とします。詳しくは令和4年度の労働保険料の計算方法が発表されてから確認することとなります。
 各労働者の給与からの雇用保険料率の徴収額が上がるのは令和4年10月分給与からです。

 

◆ 相続税額の取得費加算の特例

相続で土地、建物、株式などの財産を取得した後、これらを譲渡した場合、譲渡所得に所得税が課されます。この場合、相続財産の譲渡に係る「取得費加算の
特例」を利用することにより譲渡した資産に対応する相続税額を取得費に加算し、譲渡所得を減らすことができます。

▽相続人の譲渡所得税の負担を軽減する制度
 この制度は、相続により財産を取得した者が、納税資金の捻出などのため、相続財産を売却しようとする場合、被相続人の取得時から蓄積されたキャピタルゲインに課税されることから、納税者の所得税負担に配慮した調整措置として設定されています。

▽適用要件は3つ
 この制度を利用する要件は次の3つです。
(1)相続または遺贈により財産を取得した者であること。
(2)その財産を取得した者に相続税が課税されていること。
(3)その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後、3年を経過する日までに譲渡していること。

▽上場株式の譲渡で申告不要の選択に注意!
 上場株式を譲渡した場合、申告分離課税で申告するか、申告不要とするかを選択することになりますが、先に申告不要を選択したときは、後で「取得費加算の
特例」を適用した方が有利であることに気付いたとしても、既に申告不要で確定申告しているので更正の請求は難しくなります。
 租税特別措置法には、やむを得ない事情がある場合に「取得費加算の特例」を認める宥恕規定があります。しかし、確定申告で申告不要を選択したことだけでは、その申告が計算の誤りや国税に関する法律の規定に従っていなかったとされず、宥恕規定の適用が認められなかった判例があります。

▽相続空き家の特例とは重複できない
 相続で空き家を取得した後、譲渡した場合、一定の要件を満たせば3000万円の特別控除ができる「相続空き家の特例」を適用できますが、適用した家屋と敷地
に「取得費加算の特例」は重複適用できません。
 なお、相続した土地に居住用家屋と倉庫がある場合、被相続人の居住用家屋とその家屋に対応する敷地の譲渡には「相続空き家の特例」を適用し、「相続空き
家の特例」が適用されない倉庫とその倉庫の敷地の譲渡には「取得費加算の特例」を適用する使い分けができます。

 

賃貸不動産の一時的空室

相続で賃貸不動産を取得したとき、財産評価で一時的に空室となっている住戸にも評価減を認める取扱いを受けるには、賃貸業務の継続性に加え、空室期間を長期化させないことが必要となります。

▽賃貸不動産の財産評価
 相続や遺贈で財産を取得する場合、財産は時価で評価します。相続財産の時価は、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に、通常成立すると認められる価額とされています。
 貸家および貸家の敷地の用に供されている貸家建付地は、賃借人が建物を使用することで支配権を有しているため、貸主の側も利用に受忍義務が生じることから評価額が減額されます。反対に賃貸されていない貸室部分は賃借人の権利が存在しないので評価は減額されず、自用地評価となります。

▽相続財産の一時的空室の扱い
 一方、一時的な空室であることが認められれば、例外的に賃貸されているものとして評価の減額が認められる場合もあります。
 税務署は、質疑応答事例で相続した時点で空室があった場合、その空室について相続の前後で賃貸が継続され、新たな賃借人の募集が退去後、速やかに行われ、空室期間中、他の用途に供さず、空室期間が課税時期の前後で例えば1か月程度などの要件をみたせば、事実関係を総合判断して例外的に、空室部分も賃貸されているものとして評価減を認めるとしています。
 しかし、現実は、空室はすぐに埋まらず、課税実務では、「例えば1か月程度の要件を充たしていない」として自用地評価とされてしまうことが多いのではないでしょうか。

▽不動産所得における一時的空室との違い
 ところで、不動産所得では、空室期間が1か月を超えたとしても、賃貸業務を継続中であれば貸付の用に供されているものとして減価償却費などを経費として算入します。
 これは不動産所得が1年間の総収入金額から必要経費の額を控除するフローの金額としてとらえられるのに対し、財産評価は、相続開始時のストックの評価額としてとらえることとの違いによるものと思われます。

▽空室を早期に埋める実態をつくる
 空室を1か月で埋めるのは立地、賃料などでよほど優位な物件でない限り困難ですが、間断のない募集活動により空室期間の短縮をはかり、空室が一時的であることを事実関係から説明できるようにしましょう。